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大阪地方裁判所 昭和50年(ミ)9号 決定

申立人

東邦産業株式会社

右代表者

谷山武男

右代理人

中筋一朗

外四名

主文

本件申立を棄却する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

第一本件申立の要旨

一、申立会社は前代表取締役秋保盛一の父盛正が昭和四年八月に設立した合資会社東邦商会をその前身とし、戦時中の企業統合整備のため、右秋保盛正が同じくすでに設立していた、製鋼用人造黒鉛電極の製造を目的とする協和カーボン株式会社と合併することとなつたのを機会に、新しく昭和一五年一二月九日、現商号で資本金を一八万円として設立されたものである。

申立会社は右設立の経緯からも明らかなように、炭素系製品である電極、電解板などを取扱う専門の商事会社として、永年の経験と信用に裏付けられて、着実にその業績を挙げてきた。さらに昭和三五年ごろからは、輸出入業務を取扱う貿易商社へ脱皮を図り、商品としては機械、鉱産物、木材、冷凍水産物および建設資材を扱うなど、貿易商社としても成長を遂げてきた。

この成長の経過を申立会社の資本金の推移によつてみてみると、前述のように当初資本金は一八万円であつたものが、昭和二二年以降次第に増資を重ねて、昭和三一年には九六〇万円、昭和三四年には二、〇〇〇万円、翌三五年には四、〇〇〇万円つづいて翌三六年一二月には一億円その一年後の三七年一二月には遂に二億二、〇〇〇万円というように、当時景気の好況と高度成長といつた一般的な傾向もあつて、急速な増加を示した。そしてさらに昭和三八年七月、二億四、〇〇〇万円へと増資し、同年一〇月にはその株式を公開して、大阪証券取引所第二部へ上場した。その後約一〇年間は資本金に変化はなかつたが、昭和四九年六月に一億二、〇〇〇万円の増資をして現在の資本金三億六、〇〇〇万円となつたものである。因みに申立時現在の申立会社の発行済株式総数は七二〇万株、その株主数は七〇一名である。

二、前述のように申立会社は炭素系製品および原材料を取扱う専門商社として発足したものである。特に炭素系製品のうち電解板は、後述する申立会社の関係会社、東北協和カーボン株式会社の製品を、申立会社が総代理店として販売しているものである。その市場占有率は約五〇パーセントに達しており、申立会社の利益率をみても一〇パーセントといつたようにもつともよいものである。東北協和カーボンは右のようにメーカーで、その組織中に販売部門を持たず、総代理店である申立会社を通じて販売しているわけで同社にとつて申立会社は不可欠の存在であるし、また他方申立会社にとつてもその専門商社の立場から東北協和カーボンは必要な会社である。人造黒鉛については協和カーボン株式会社(かつて申立会社の関係会社であつた。しかし昭和四二年以降は住友化学株式会社の系列下に入つている)の製品を申立会社が需要先に販売しているものである。これら炭素系製品および原材料の販売は、申立会社の売上高のうちで常に二五パーセント以上を占めている。その他のものとしては電子機器などの機械、鉄鉱石、螢石などの鉱産物、木材、冷凍食品などの林産、水産物の輸入業務があり、その割合も相当な額にのぼつている。

なお、申立会社の第三四期(昭和四八年一〇月から翌四九年九月まで)における国内販売と貿易取扱高との比率は五六パーセント対四三パーセントとなつている。

申立会社は頭書の住所地に本店を有するほか、東京と仙台にそれぞれ支店を札幌に営業所を、台湾の台北市とオーストリアのウイーンにそれぞれ海外事務所を設置している。申立時における従業員総数は一三二名で、このうち就業規則上の社員が一二七名、役員兼務の従業員が三名、嘱託が二名である。右従業員らに支払われる月額の給与(基準内賃金)総額としては約一、九〇〇万円(一人平均一五万円)を要する。

三、申立会社の本件申立に最も近い決算としては昭和五〇年三月三一日付の中間決算があり、この概要は別表一のとおりである。これによれば、昭和四九年一〇月一日から翌五〇年三月三一日までの期間(第三五期の上半期)に、一応二、〇〇〇万円余の利益を出したこととなつているが、右貸借対照表の資産の部には通常の会計原則上、計上の認められるものであつても、その資産性に問題を残すものも多く、そのような観点から厳正にみなおしをすると、相当の含み損失を計上することになると思われ、その場合には却つて欠損金を計上しなければならなくなるであろう。

申立会社の右決算時における債権者の状況についていえば、それは総額で約一〇一億六、六八八万円、その内訳は金融機関が徳陽相互銀行ほか二八社で約二六億六、二九〇万円その他取引上の債権者が約三六七社で約七五億三九八万円である。

四、本件申立にあつては、関係会社である東北協和カーボンとの関連がきわめて重要であるので、この点を詳しく述べておきたい。

協和カーボン株式会社が申立会社と同じ創始者により設立され、経営されてきたことは前述のとおりである。同社が製造する炭素系製品には黒鉛電極と電解板があつたところ、電極の需要家が製鋼メーカー、電解板の需要家が化学工業メーカーというように分れていたこと、この二つの製品部門を分離し別法人で生産することが、賃金体系の格差などの点においても望ましい状況にあつたことから協和カーボンから電解板部門を切り離し、昭和三六年七月仙台に東北協和カーボン株式会社の商号で右電解板の製造会社を設立した。このようにして協和カーボンは電解板をという生産体制ができ上つた。昭和四二年に至つて山陽特殊鋼の倒産事件を契機として、協和カーボンが住友系列に入ることとなつたが、東北協和カーボンは依然として申立会社と資本関係、経営権関係のあるまま残つたものである。

東北協和カーボンは設立以来順調にその業績を挙げ、生産量を拡大してきた。すなわち、その生産量は昭和四〇年に三、二五一トンであつたものが昭和四九年には六、〇四〇トンと倍増し、電解板では業界のトップの地位を占めるに至つた。

その間、昭和四八年には公害問題などもあつて工場の移転を要したところ、宮城県の斡旋により同県黒川郡大郷町に工場用地の確保ができ、同五〇年一月には一四万二、〇〇〇坪の敷地に新鋭工場が完成して、六月から完全操業に入つている。したがつて東北協和カーボンはこの新設備でもつて生産をする体制にあり、かてて加えて業界での市場占有率は現在約五〇パーセントに及び、この製品は大手化学工業メーカーにとつて必要不可欠なものである。この製品が順調に入手しうるか否かは化学工業界にとつて大きな問題である。

再述すれば、申立会社は右のような東北協和カーボンの製品を、従来からの経験と信用によつて、総代理店として一手に販売してきたのである。

五、申立会社は現在その事業の継続に著しい支障をきたすことなく、すでに弁済期にある債務を履行することができない状況にある。ここに立ち至つた原因としては二点があげられる。その一つは次のことである。すなわち、申立会社は過去三期(三二期ないし三四期)においてその売上を急速に伸ばしてきたが、これに伴い必要な運転資金量も増加した。しかし自己資金の乏しい申立会社は当然に借入金に大きく依存せざるをえなかつた。もちろんそれにつれ金利負担も大きくなつていつたことはいうまでもない。このような資金事情にあるところへ、昭和四九年以来の一般的不況のため申立会社の売上は低下し、同年一〇月から昭和五〇年三月までは、なお一〇三億円の売上を達成できたが、四月以降はこれが大幅に落ち、通常要求される月商一七億円程度の最低ラインをも達成できず、五月には一四億円、六月には遂に八億円といつた極端な落ち込みとなり、これらが、たちまち申立会社の資金繰りを圧迫してきたことである。もう一つは過大な不動産投資による資金の固定化があげられる。申立会社は炭素系製品の専門商社としての事業にとどまらず、土地関連事業の好況の波に乗ろうとして、主に昭和四八年ごろから不動産開発事業に着手した。とりわけ、仙台市郊外の亘理町にある土地六万坪は、申立会社の右事業のうち最大の規模のものであつて、この工事は約六〇パーセント進行している。しかし、これに投下してきた資金も大部分は借入によりまかなつてきたもので、この資金の固定化もまた申立会社の資金操作を困難ならしめた原因の一つである。

このような情況のもとで、申立会社の資金繰りは昭和五〇年七月末日以降急速に悪化した。しかし申立会社としては、極力関係銀行筋の協力を仰いで、この危機を乗り切るべく奔走し努力したが、同社についての信用不安の憶測や風説が、実際以上に誇張されて金融界、証券界に流れたこともあつて、ますます融資を受けることが困難となつた。かくして、同年八月末日現在で満期の到来する申立会社振出の支払手形の総額は約三億三、〇〇〇万円に達するのに対して、その決算金として準備できるのは約二億円にすぎず、申立会社は右期日に支払を停止せざるをえず、不渡処分を受けることは必至の現況にある。

六、申立会社の業績および資金繰りの悪化は右のとおりであるが、先にも述べたように申立会社は東北協和カーボンの総代理店であり、炭素系製品の販売を専門とする商社として永年培われてきた信用を保有しており、そこに生きる道があると信んずるものである。なかんずく、東北協和カーボンが製造している電解板は、今後日本国内の化学会社が生産方法の転換を行なえば、その需要が伸びなやみ、これに比し海外の化学工場における需要の伸長することが見込まれる。そのような場合には、申立会社にとつて同社が長期にわたつて海外取引をしてきたことが大きな利点となろう。したがつて申立会社の更生の成否は、東北協和カーボンの発展にとつても一つの重要な鍵である。そこで申立会社の機構を大幅に縮小し、人員も三〇ないし四〇名ぐらいに削減し、各営業部門を合理化できるならば、右東北協和カーボンの製品の販売を中心に、あと鉱石、水産物の輸入業務を附加して行ない、また前記亘理町の土地開発事業は継続し、可能なかぎり造成地を販売して、関係債務の弁済に務めることにより申立会社の更生は可能であると考える。よつて本件申立をするものである。

第二当裁判所の判断

一本件疎明書類、会社更生法一〇一条二項にもとづく調査委員の調査報告ならびに申立会社の前代表取締役秋保盛一の審尋の結果、その他関係者の意向聴取など当裁判所の調査の結果を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  申立会社の目的、設立の経緯、経営の推移については、概ね本件申立の要旨一、二記載のとおりである。なお申立会社は昭和三八年一〇月同社の株式を公開して、大阪証券取引所第二部へ上場しているが、昭和五〇年九月二六日現在の株式分布からも理解されるように、前代表取締役秋保盛一と当時同人が代表取締役を兼務し、かつ大株主として同人が支配していた株式会社秋保商店、東北協和カーボン株式会社が有する持株数合計は約四四パーセントにも達し、後述する右秋保の経営方針と相俟つて秋保の個人色の濃い企業であつた。

(二)  申立会社が、本件会社更生手続の開始を申立てるに至つた原因については、調査委員が指摘するように(報告書一一ないし一九頁)一二点の内外の諸要因が考えられる。要するに、申立会社は体質的に収益力が低く、資本蓄積がなかつたところへ、申立会社の能力以上の多角経営が、同社の資金繰りを悪化させ、また第三四期(昭和四八年一〇月から同四九年九月まで)ごろからすでに金融機関での資金調達は相当困難となつていたこと、直接には融通手形に関する事故が表面化し、金融機関から必要な融資を受けられなかつたことが原因である。しかし、これも申立会社の経営姿勢、経営体質に大きく根ざしているものと考えられる。すなわち申立会社は創設者秋保盛正がながらく代表取締役をしていていたが、同人の死去したのち、昭和四五年三月秋保盛一が代表取締役となつた。そして申立会社の営業政策は同人の独断専行にまかされ、業務執行につき取締役あるいは取締役会は何らその本来の機能を果していなかつた。またこの独断専行は必ずしも計画性とか先見性に裏打ちされていたとはいい難い。例えば、右秋保は申立会社の低収益性からの脱出を図るべく、従来の炭素系製品以外の品目を取扱い、また土地開発事業に手を染めるなど経営の多角化に踏み切つたわけであるが、もともと自己資本比率の低い申立会社としては、右営業拡張による資本需要を借入金あるいは手形割引などにより満す他はなく、このことは投下資金が必要な周期で回転しないかぎり、金利負担として申立会社の資金運用面を圧迫することはいうまでもないし、また右土地開発は通常資金の固定化をもたらし易い性質の事業であることも自明である。そして右多角化は奏効せず、従前二、三億であつた申立会社の商品在庫は第三三期(昭和四七年一〇月から同四八年九月まで)には棚卸商品たる不動産四億四、三〇〇万円を含めて一四億五、〇〇〇万円にも及び、これは申立会社の当時の資本金(二億四、〇〇〇万円)の六倍にも達するものであつて、これにより申立会社の資金の流動性は極端に低下していつた。これなどは無計画な独断専行の弊害の一つといえよう。

また申立会社の金融機関からの資金調達能力は小さく、前述のような急激な資金需要には手形割引や支払手形の増発によつて対処し、さらには多額の融通手形の乱発によつて一時凌ぎをしてきたが、第三四期にはもうそれらの財務的負担に耐えられず、一時に膨大な欠損として表面化し、すでにこの段階で申立会社は破局を迎えていたものであるが今回その清算を迫られているのが実情である。このように申立会社が主要な取引銀行を持たず、企業間の信用の供与といつた変則的な資金操作を続けていたこの経営体質も問題とされなければなるまい。

かくして、申立会社は遂に昭和五〇年八月末日以降に弁済期のくる債務の決算資金に窮するに至つたものである。ここに同社の第三二ないし第三五期(昭和四六年一〇月一日から同五〇年九月一日まで)の間の営業成績の概略を示すとそれは次表のとおりである。

第三二期

第三三期

第三四期

第三五期

営業利益

一二九

二五三

九八

一六七

営業外収益

一九七

一九四

三五七

三三七

営業外費用

二四九

四二五

七五八

九六八

経営損益

七七

二二

△三〇八

△四六四

特別損益

△五二

△六二

△二五

△ 五

当期税引後損益

一二

△ 六八

△三七二

△四六九

(単位は一〇〇万円、△印は損失)

(三)  申立会社の本件申立日(昭和五〇年九月一日)現在の資産、負債の状況は、これを会社更生法一七七条二項所定の会社の事業継続を前提に評価(いわゆるゴーイング・コンサーン・バリュー)すれば、資産総額は一三三億六、四〇〇万円、負債総額は一四〇億八、二〇〇万円である。これに対し本件申立の結果により発生する損失をも見込み、清算を前提として評価すれば、資産総額は七一億二、五〇〇万円、負債総額は一七七億五、三〇〇万円である。したがつて、申立会社はいずれにしても明らかに債務超過であつて、破産の原因たる事実(破産法一二七条一項)が発生しているものである。

二そこで、申立会社の更生の見込みについて判断するに、前顕疎明資料および各調査の結果から次の事実が認められる。

(一)  申立会社はその設立の経緯からもわかるように、炭素系製品を取扱う専門商社として成長してきたもので、第二六期(昭和四〇年一〇月から同四一年九月)においては全売上の40.7パーセントは右製品であり、そのうちでも輸出向けが多く、申立会社の全輸出高の九八パーセントを占めている。また第三四期にはすでに前述のように申立会社の経営の多角化が進んでいたために、炭素系製品の割合は相対的に減少はしているものの、なお二九パーセントに達している。また他の取扱品目に比較しても利益率も安定しているといつた利点がある。したがつて、他に右製品に代りうる有望な商品がない以上、申立会社の更生の可否は、右炭素系製品の営業を継続しうるか否かにかかつているといえる。また他方右製品メーカとの間の取引継続が可能な場合でも、その取引量、マージンの率、炭素系製品以外の商品による収益の割合、海外貿易について信用状の開設あるいは外国為替取引の可否さらには申立会社所有の要開発土地の有利な処理などの諸条件が満たされなければ、やはり申立会社の更生は困難である。すなわちこの二つの与件につき一つでも欠ければ更生の見込みはないといわなければならない。

(二)  そこでこれらの点について検討する。申立会社が取扱つてきた炭素系製品の主たるものは電解板と電極である。申立会社と取引のあつた電極のメーカは協和カーボン株式会社であるが、同社との取引は本件申立後途絶えており、その復活は殆んど不可能である。しかし、電極は申立会社の売上高のうちでは、減少傾向にあり、代替仕入先を模索する余地もあり、重点はやはり電解板である。その電解板については、申立会社は古くから同社と密接な繋りのある、関係会社、東北協和カーボン株式会社の製品を総代理店契約のもとに販売してきたものである。というよりも東北協和カーボンと申立会社の関係は内部的には、一企業の製造部門と営業部門の関係にあつたもので、申立会社がその後経営の多角化などで独走したため、外部的に一体感を薄める結果となつているものである。ところで東北協和カーボンは本件申立直前の昭和五〇年八月二九日前記総代理店契約を解除した旨主張し、(その後同年九月二九日には改めて解除の意思表示をすべく更生裁判所の許可をえている。)東北協和カーボンは本件申立と同日に仙台地方裁判所に会社更生手続開始の申立をしたが、その申立に先立つて、協力を得られると思われる金融機関から、条件の一つとして申立会社との取引関係を解消すべきことが提示されており、右手続開始の申立に対し同年一〇月三一日仙台地方裁判所がなした開始決定においても、右条件のもとに仙台の三行ほか各金融機関が支援を約していることが記載され、右決定ではこの事実をも踏まえて、更生の見込みがないとはいえないと判断されている。とすると、東北協和カーボンとの電解板の取引の可能性もないものといわざるをえない。

(三)  ところで、東北協和カーボンとの取引が継続できるものとして申立会社が作成し、調査委員のところで手を入れた「更生後の販売見込」があるが、これでは炭素系製品の売上を全体の約五〇パーセントとし、残余は金属製品およびその他の物資を扱つて、月間売上総利益を三、一五〇万円と見積つている。そして月間費用の見込額は減価償却前で二、二一二万円、償却後で三、〇四五万円と推算できるから減価償却をすると辛じて一月の利益一〇〇万円を挙げうるにすぎず、しかも開始後の金利は一切考慮に入れていないし、売上が予想通り果せなかつたり、利益率が見込以下の場合とか、さらに信用状開設の成否によつて、取引量や利益率の低下がある場合などはたちまち採算割れとなる危険性がある。かてて加えて、申立会社が現在開発事業を行つている宮城県亘理郡亘理町の土地三万四、六一五坪(販売可能面積)の宅地造成工事は全体として約六〇パーセントが完了しているとはいえ、目下のところ工事は中止されており、これを竣工するには残工事費八億円を、また販売費用と管理費で合計一億四、〇〇〇万円をそれぞれ要するものと予想されるところ、申立会社に右資金を調達する能力はないことはもちろん、仮りに造成を終え販売しても利益を得ることは不可能であつて、却つて右土地を処理するまでの間の保守管理の費用として前記営業利益の一部を割かなければならないであろう。

ともあれ申立会社の場合は債務弁済の引当となるのは、一つにかかつて同社の商取引上の収益によるのであるが、その収益が低く、また漸増であつても好転する見透しは、申立会社のような業態で信用を失墜したいま、非常にたて難い。

以上のとおりであるから、結論として申立会社について更生の見込みはないものと認めざるを得ない。

三よつて、会社更生法三八条五号により本件申立を棄却することとし、申立費用の負担につき同法八条、民訴法八九条を準用して、主文のとおり決定する。

(首藤武兵 菅野孝久 岩谷憲一)

別表

(単位100万円以下切捨)

(資産)

1 流動資産

10,498

2 固定資産

675

3 繰延勘定

20

11,194

(負債)

1 流動負債

9,107

2 固定負債

1,478

3 引当金

54

10,639

(営業損益)

1 営業収入

10,344

2 営業費用

10,080

3 営業利益

264

(営業外損益)

1 営業外収入

217

2 営業外費用

456

(特別損益)

1 特別利益

134

2 特別損失

140

(当期利益)

20

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